本のこと日記

2008年08月の本のこと日記

2008.08.15 『一瞬の風になれ』佐藤 多佳子

陸上モノの小説といえば、川島誠さんの「800」、三浦しをんさんの「風が強く吹いている」など名作ぞろいですが・・・この『一瞬の風になれ』も素晴らしくよいっっ!

 神奈川の公立高校の陸上部が舞台の小説。3冊もある長編ですが、一気に読めちゃいます。スポ根とか、ただただ熱いとか、ひたすら爽やかとか・・・そんなんじゃありません。陸上を知らなくても読めば高校時代の甘酸っぱい思い出が蘇ってくること間違いなし。
壁にぶつかったり、悩んだり、挫折したり、喜んだり、燃えたり、恋したり、ケッってなったり・・・これが青春です!私がしばらく忘れてしまっていた一生懸命だった毎日がこの本に詰まっていました。本当に読んでよかった!

 とくに高校時代陸上班だった私にはこの『一瞬の風になれ』の出来事すべてが懐かしく、キラキラでした。

2008.08.02 『人間失格』太宰 治

「本好き」と言いながらわたし、太宰治は「走れメロス」しか読んだことがありませんでした。しかも国語の教科書で半強制的に・・・。
心中の常連でいつも自分は助かっていて、挙句玉川上水で自殺、そんな太宰をなかなか読む気になれずにいました。太宰って狂人じゃん?なんて勝手に思っていたのも事実です。

が、とうとう読む気になったのは夏休みだから、です。
夏休みになるとクローズアップされる各文庫の「夏の100冊」的なアレ、毎年売れゆきbPは夏目漱石「こころ」、そして「人間失格」は第2位だとか。

 太宰本人でしょう、これは・・・。と思わせる男の半生を描いた「人間失格」。「はしがき」ではじまるのっけから引き込まれる内容です。
 主人公の葉蔵は才能がないわけではないのに、どうも自分に弱くどんどん堕落していく男です。でもその堕落の仕方、心の葛藤は決して狂人的ではなく、どこかしら「明日はわが身」と私には思えました。
 周囲に明るくひょうきんにふるまっていても、時々そのことにドッと疲れることがある葉蔵。でもそれって、私にもごくたまにあてはまりますもん。
 そして、もしコレが太宰の自伝的小説だとしたら・・・、コレを書くことができた太宰は本当に天才だと思わずにいられません。ここまで自らをさらけだし、心のうちを描くことができるなんて。そしてだからこそ、「人間失格」を読み進めれば読み進めるほど、私の心もチクチクと痛むのです。葉蔵の心の中がそのまま自分の中の卑怯さや醜さを映し出している気がするのです。
 小説ももうラストの部分
「すすめられて、それを拒否したのは、自分のそれまでの生涯に於いて、その時ただ一度、といっても過言でないくらいなのです。自分の不幸は、拒否の能力の無い者の不幸でした。すすめられて拒否すると、相手の心にも、永遠に修繕し得ない白々しいひび割れが出来るような恐怖におびやかされているのでした」
これを読んだとき、「これは私のことだ・・・」と思いました。私も何かを断ることが苦手な人間です。断って嫌われるのが怖いから。
 葉蔵、というか太宰は私の嫌な部分をすべて知っているのではないか、という気持ちすらしてきます・・・。
 この小説を書き終え、世に発表している最中に自殺を図った太宰。それを思えば思うほど、「人間失格」は太宰の魂の言葉として私の心に響くのです。

(ミッチョリーナ)

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