本のこと日記
2007年09月の本のこと日記
2007.09.26 『烏金』西條 奈加
松井今朝子さんの「吉原手引草」以来、今だ続く時代小説マイブーム。今回は西條奈加さんの『烏金』、表紙は江戸の市井の人たちを描いた絵・・・ジャケ買いです。
朝借りたお金をその日のうちに返す仕組みの日銭貸し。明け烏のカァで借り、夕方のカァで返すことから『烏金』と呼ばれます。そんな「烏金」、金貸しのお吟の家にどこからともなくやってきて仕事の手伝いを始めた浅吉。どうやらお吟が溜め込んでいるお金が目的のようですが。。。
こんな江戸の町を舞台にしたわくわくストーリー、なぜかアジアのリゾートアイランドで足裏マッサージを施してもらいながら読んでいた私。
マッサージをしてくれているインドネシア人女性2人の目線が私の本に。
ホワット?
「おしーん!」
!!!!!!
そういやアジアでは「おしん」が大ブーム。どうやら彼女たちは表紙の絵を見て「おしん」を読んでいると思ったらしい。
「おしん(じゃないけど)」に興味津々のインドネシア女性、次の質問がまたグレイト。
「日本人は日本ではその格好(着物にチョンマゲ、日本髪ね)をしているのか?」的なことをENGLISHで聞いてくる。
いやいやいや、まさかまさかまさか。
「多クノ日本人ハ普段着物ヲ着テイマセン。着物ハ セレモニーノ時ニ着マス。『おしん』ハ アバウト100イヤーズアゴー ノ物語デス。」とプチ文化交流大使を務めた私。
びっくりだわ。ほんとに未だに日本人は腰に刀を差してチョンマゲ結ってるって思う世界の国々もあったのね。
ま、そのときの私の髪型の「討ち入り行ってきましたぜ!」みたいにボサボサしてましたが。
話が横にそれたわ。。。
『烏金』、めくるめくマッサージに身をゆだねながら一気に読めたわ。
主人公浅吉は金貸し、とは言っても、お金に困って店に来る借り手に知恵を絞って金儲けややりくりのアドバイスをしたり、図らずともなんだかヒーロー。でもただのヒーローもんの物語じゃないんだな。
この浅吉、なーんか裏があるっぽい。何企んでるんだ???と思ううちにどんどんページが進んじゃう。
江戸の市井の様子や、人情、友情、いろんなものが詰め込まれている小粋な小説です。
貧しいながらも一生懸命生きるオールド ジャパニーズ。
「おしん」に続き「烏金」もウケると思うヨ、アジアで!
(By ミッチョリーナ)
2007.09.25 『不機嫌な果実』林 真理子
林真理子先生の「不機嫌な果実」。
結婚もしていないのに不倫小説を読んじゃいました。
読み出した途端に強烈なバブルのニオイを感じる小説ですが、意外にも96年発行。バブル崩壊後に書かれたのね・・・。じゃあ、このバブル臭は林真理子さんのせい?
どこがバブルっぽいって、この本全体に漂う価値観・人生観。カネと地位と洋服とオシャレレストランとエスコートされる私・・・みたいな。
バブル期を経験したことのない氷河期女の私をイラつかせる要素満載。
主人公・麻也子は「いつも私ばかりが損をしている」とか思ってる女。もうそれだけでこの女はわたし的にNGですが、男の選び方がまた陳腐。「男はカネと地位があってこそ」って感じの薄っぺらい価値観。もしかして林真理子もこの価値観?
「あー退屈」「いつも私ばかりが損をしている」と思い続け、すったもんだの挙句離婚してしまった麻也子ですが、不倫相手と再婚してもやっぱり満たされなくて不倫を重ねる・・・。
―――ふふふ。この女は結局アホが治らない限り、同じこと繰り返すのよ!
なんとなくイラつきながら読み進めていたけど最後にキッチリ麻也子にもツケが回ってくる。
さすがだわ、林真理子先生。先生の掌中にハマったわ。途中まで私をあんなにイラつかせていたのもきっと先生の作戦。この本はきっとすべての女性への警告だわ。
林真理子さんほど女の妬みや浅はかさ、そして凡庸さを冷静に書ける人はいないなあと妙な感心をしちゃいました。
(By ミッチョリーナ)
2007.09.23 『あかね空』山本 一力
2002年、第128回直木賞受賞作。
京から江戸へ単身やってきて、江戸っ子の町深川で一から始める豆腐職人と妻、そしてその子たち2代にわたる物語。
京と江戸の味覚やしきたりの違いのとまどいながらも家族で頑張るストーリーだ。
人情ものに滅法弱い私は「いいねぇいいねぇ」言いながら一気に読んじゃいました。
どんな家にも大なり小なりある家族問題。
愛し合って一緒になった夫婦でも、そして血を分けた親子でも、互いに分かり合えなかったり、すれ違ったりしてしまうこともある。
相手のためを思ってやってることが、理解されないどころか、とんだ迷惑だったりすることだってあるじゃない!
意見の相違から同じ家族なのに憎しみあって、いがみ合って・・・。
それでも、なんでもやっぱり「家族」。家族の結束があればどんな困難も跳ね返せる、逆に家族が結束しなかったらすべてがぐらつく。
家族って強い!と思わせてくれる作品でした。
ありきたりのストーリーなんだけど、ズシンと心に響くんだな。
思えば御影家もしょっちゅうケンカばっかりしていたなあ。
特に高校生のころなんて、どうしてあんなに父親のこと嫌いだったんだろう?って思うぐらい父とはケンカ三昧でした。
「頼むから、私は捨て子でありますように」なんて思ってたし・・・。
でもね、今になってわかります、やっぱり最後の最後まで味方でいてくれるのは家族なんだなあって。
あー・・・家族で湯豆腐食べたくなった!
(By ミッチョリーナ)
2007.09.22 『いい子は家で』青木 淳悟
ファミリー、っていうか、ホームっていうか、ハウス、っていうか・・・「家」がテーマの3つのストーリー「いい子は家で」「ふるさと以外のことは知らない」「市街地の家」が収録されています。
内容はどれも微妙にヘン。そりゃ、「家族」って結局中身はどの家もヘンなんでしょうけど。
敬愛する江國香織さんがオススメしていたので、早速読んでみたのですが、残念ながら私のツボじゃありませんでした。。。
だって・・・理屈っぽいんだもん。。。
たとえば「ふるさと以外のことは知らない」では洗濯機&洗濯の描写だけで延々7ページ半。
よくそんなに書くことがあるな、とある意味感心。
じゃあどんな風に7ページ半かというと、
男性はポケットに物を入れっぱなしで洗濯に出す、だとか、タグを読んで分けてどうのこうの、だとか、ネットに入れてどうのこうの、とか・・・
私みたいな性格の女にしてみれば「そんなのどうだっていいじゃん!」
そりゃね、これも敬愛するホワイト家族のお父さん(犬)は「すべてのものには理由がある!」って言ってますよ。
だからってやれポケットが、とかネットが、とか長々説明して、すべてのものに理由があるんだろうけど・・・でも、くどい!
疲れる。ディテールが細かすぎて、日ごろ大雑把な私の性に合いませんでした。
それに、意味不明。ところどころ急に日常生活から不思議ちゃんワールドに飛躍するし。
いきなり主人公が得体の知れない生物になるし・・・。
なんやわからんけど、なんの前触れもなく主人公の顔にはピアノ線のような細長いひげが伸びはじめ、頭の上には三角形の耳が生える。父親の耳からは「得体の知れないうんこのようなもの」が飛び出す・・・。で、何事もなかったようにいきなり現実の話に戻る・・・。
突如、時間軸がゆがんだりするし。名画「ムンクの叫び」を言葉でいちいち解説されているよう。(「ムンクの叫び」は大好きな絵ですが)
もうわたし、ツイテイケマセーン。
この本を読んで、意外と自分は現実的な人間なんだわということがわかりました。
(Byミッチョリーナ)
2007.09.21 『暁のひかり』藤沢 周平
藤沢周平の短編集です。
全編にわたって、町人の人情、はかなさ、切なさ、強さが描かれています。
割と暗めな作品が多い中でも私が気に入ったのは『しぶとい連中』。
ユーモラスです。
酔っ払って帰る途中に身投げしようとしている母子3人に遭遇した熊蔵。熊蔵は止め、しかも持っていたお金を渡して助ける。
が!!!
が!だ。
助けた親子は、「来るな」というのに熊像の後をつけてきて、さらに熊蔵の家に居座ってしまう。勝手に台所を使ってご飯作って食べるわ(食材はもちろん熊蔵のもの)、勝手に近所づきあいするわ・・・助けてやったのに、家を、というか生活すべてを乗っ取られてしまった熊蔵。
腹立たしさを覚えながらも、それでも熊蔵は増えてしまった同居人?いや、家族のためにお金を稼ぐ・・・。
というストーリー。
家に居座り、乗っ取る母子のしぶとさに完敗です・・・苦笑。
おまえ、絶対身投げなんてする女じゃないだろ!
大した玉ですよ、この母子は!
強面でヤクザな職業の熊蔵もこのしぶとさにはタジタジ。かわいいんです、熊蔵が。
そんな『しぶとい連中』をはじめ、なんだか「人っていいな」と思う短編が収められています。
(Byミッチョリーナ)
2007.09.16 『細雪』谷崎 潤一郎
谷崎潤一郎といえば私は断然「痴人の愛」。谷崎さんってば!その時代(大正時代)にかなり大胆なH表現をするわ♪アバンギャルドな方なのね。と思っていました。ところがドッコイこの『細雪』はまるで絵巻物のような優雅な世界なのです。
昭和初期の大阪の旧家、蒔岡家の4姉妹の物語。といっても長女 鶴子はあまり登場しません。同じく4人兄弟の一番上の私としてはちょっと悲しい。。。当時の上流階級の日常生活や行事、風俗、衣食などがまるで御伽噺のように美しくちりばめられつつ、次女 幸子の生活を軸に、行き遅れている三女 雪子のお見合い話や、四女 妙子の恋愛などが展開します。この物語の中で頻出する「行き遅れ」というボキャに耳を痛くしながら読んだ私・・・。
三十歳 雪子と倫代 行き遅れ あゝ行き遅れ 行き遅れ(五七五七七)
三女の“行き遅れ”雪子は、「義兄達や姉達の意見が一致した時なら、何処へでも云われるままに縁づく」と言ってる割には、さりげに見合い相手のあそこがいやだとか言っちゃって思いっきりワガママ女です。しかも超頑固。おまけに見合い相手が気を遣って話しかけても「はぁ」しか言わないヮ、感謝のひとつも出来ないヮ。
でも、普段無口で、外見も華奢で弱弱しいからして、周りも雪子を気遣う。
あーいるいる、こういう女!
そういう一見大人しい女に限って、なんやかんや我を通し、周りも思うように動かすのよっ!
まったくいやな女だわっ、、、、、、とは思えないのが雪子の不思議なところ。うらやましい。。。
でもね。。。そんな物語のラストはそんな令嬢雪子の下痢で終わるの。下痢ピーよ!さすがだわ、谷崎先生!
対して四女 妙子。十代のころには新聞沙汰にもなった駆け落ち騒ぎを起こすヮ、お嬢様のくせに手に職を持とうとするヮ(当時、いいとこのお嬢は「仕事をする」なんてみっともないことだった)、金持ちボンボンを手玉に取るヮ、挙句、妊娠するヮ、とかなり破天荒なモガ(モダン・ガール)。
先日、同期の女子アナ仲間で集まったときも「結局、私たちは何でも自分でやっちゃうし、『やります!できます!頑張ります!』とか言っちゃうから男からしたらかわいくないのよ!『できませ〜ん。助けてくださ〜い』なんて絶対言わないもんね。で、最終的に頑張ったのにかわいがられない、モテない、だからますます一人で頑張るっていうデフレ・スパイラルなのよっ」という話になりましたが、妙子はまさにコレ。このパターンまんま。
私としては、4人の姉妹の中で最も共感できて魅力的な存在ですが、蒔岡家ではかなり異端。お荷物的存在。
雪子が最終的に幸せを掴むようにできているのに対して、妙子の扱いはあんまりじゃないのよ、谷崎さん・・・。
そんなところからも、「はぁ・・結局“雪子的女”が幸せになるのね。。。男はそういう女がかわいいのね。。。タイトルからして『細鶴』でも『細幸』でも『細妙』でもなく『細雪』だし・・・。」と妙に感慨深いのです。
『細雪』、なにかものすごい大きな事件が起こるわけでもなく、動きがあるわけでもないのに、なぜか惹きつけられる作品です。
読み終わったとき、この後の4姉妹はどうなるのかなあと妙に気になります。
物語は昭和16年で終わるのですが、蒔岡家も戦争に巻き込まれていくわけです。
優雅でのんきな姉妹がその後どうしているのかなあと、心配になります。それぐらい、何故かハマる小説です。
(By ミッチョリーナ)
