本のこと日記
最新の日記
2008.10.05 『気をつけ、礼』重松 清
「学校」「先生」という言葉に、何の思い出もない人はいないと思います。
いい思い出、思い出したくない思い出、昔はいやだったはずなのに今思うとキラキラ輝いている出来事・・・。
私にもたくさんあります。
私はアナウンサーになりたいなと思う前は数学の先生になりたかったのですが、それは中学のときに数学を教えてくださった「石橋先生」の影響です。数学が別に好きでも得意でもなんでもなかった私に数学の楽しさを教えてくれたのが石橋先生。数学の楽しさ、というより先生の授業が楽しくて楽しくて!そして、ただただ楽しいなと思っていただけなのに数学の成績が飛躍的に伸びました。中学生って単純^^;
それで「こんな先生になりたいな」と思ったのです。たぶん私に数学の才能があるわけではないのですが、それでも今でも「一番得意な科目は?」と聞かれれば「数学!」と答えてしまうほど、今でも数学が好きです。
石橋先生のおかげ。先生はいまどうされているのかしら?
重松清さんの「気をつけ、礼」は「先生」に関する短編集です。大嫌いだった先生も、大好きだった先生も、たくさん怒られた先生も、どうしても判りあえなかった先生も、もう亡くなられてしまった先生も、バカにしていたことを謝りたい先生も、大事なことをたくさん教えてくださった先生も。
どんな先生もみんな「先生」なんですよね。
文中の一文、「センセ、オトナにはなして先生がおらんのでしょう」――というセリフが妙に心に沁みました。
どの話も、胸の中の何かをチクチクを刺激して、ほろりとしてしまいます。
簡単にすぐに読めてしまう本なので、この秋の読書のお供に、ぜひぜひおすすめです!
(By ミッチョリーナ)
2008.08.15 『一瞬の風になれ』佐藤 多佳子
陸上モノの小説といえば、川島誠さんの「800」、三浦しをんさんの「風が強く吹いている」など名作ぞろいですが・・・この『一瞬の風になれ』も素晴らしくよいっっ!
神奈川の公立高校の陸上部が舞台の小説。3冊もある長編ですが、一気に読めちゃいます。スポ根とか、ただただ熱いとか、ひたすら爽やかとか・・・そんなんじゃありません。陸上を知らなくても読めば高校時代の甘酸っぱい思い出が蘇ってくること間違いなし。
壁にぶつかったり、悩んだり、挫折したり、喜んだり、燃えたり、恋したり、ケッってなったり・・・これが青春です!私がしばらく忘れてしまっていた一生懸命だった毎日がこの本に詰まっていました。本当に読んでよかった!
とくに高校時代陸上班だった私にはこの『一瞬の風になれ』の出来事すべてが懐かしく、キラキラでした。
2008.08.02 『人間失格』太宰 治
「本好き」と言いながらわたし、太宰治は「走れメロス」しか読んだことがありませんでした。しかも国語の教科書で半強制的に・・・。
心中の常連でいつも自分は助かっていて、挙句玉川上水で自殺、そんな太宰をなかなか読む気になれずにいました。太宰って狂人じゃん?なんて勝手に思っていたのも事実です。
が、とうとう読む気になったのは夏休みだから、です。
夏休みになるとクローズアップされる各文庫の「夏の100冊」的なアレ、毎年売れゆきbPは夏目漱石「こころ」、そして「人間失格」は第2位だとか。
太宰本人でしょう、これは・・・。と思わせる男の半生を描いた「人間失格」。「はしがき」ではじまるのっけから引き込まれる内容です。
主人公の葉蔵は才能がないわけではないのに、どうも自分に弱くどんどん堕落していく男です。でもその堕落の仕方、心の葛藤は決して狂人的ではなく、どこかしら「明日はわが身」と私には思えました。
周囲に明るくひょうきんにふるまっていても、時々そのことにドッと疲れることがある葉蔵。でもそれって、私にもごくたまにあてはまりますもん。
そして、もしコレが太宰の自伝的小説だとしたら・・・、コレを書くことができた太宰は本当に天才だと思わずにいられません。ここまで自らをさらけだし、心のうちを描くことができるなんて。そしてだからこそ、「人間失格」を読み進めれば読み進めるほど、私の心もチクチクと痛むのです。葉蔵の心の中がそのまま自分の中の卑怯さや醜さを映し出している気がするのです。
小説ももうラストの部分
「すすめられて、それを拒否したのは、自分のそれまでの生涯に於いて、その時ただ一度、といっても過言でないくらいなのです。自分の不幸は、拒否の能力の無い者の不幸でした。すすめられて拒否すると、相手の心にも、永遠に修繕し得ない白々しいひび割れが出来るような恐怖におびやかされているのでした」
これを読んだとき、「これは私のことだ・・・」と思いました。私も何かを断ることが苦手な人間です。断って嫌われるのが怖いから。
葉蔵、というか太宰は私の嫌な部分をすべて知っているのではないか、という気持ちすらしてきます・・・。
この小説を書き終え、世に発表している最中に自殺を図った太宰。それを思えば思うほど、「人間失格」は太宰の魂の言葉として私の心に響くのです。
(ミッチョリーナ)
2008.07.28 『草枕』夏目 漱石
お馴染みのこの冒頭。
「山道を登りながら、こう考えた。
智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい。」
この文章、大好きです。
なんだかわかんないけどなんかもうイヤッ!って時に、この文章を思い浮かべます。
そうなんだよな。あの漱石先生だって住みにくいと思ってたんだもん。パンピーの私は「兎角に」どころかムチャクチャ住みにくいよ。
で、この先がまたいい!
「住みにくさが高じると、安い所へ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生れて、画が出来る。」
そうなんだよね。だから人間界はおもしろいんだよ、と思うわけです。
『草枕』、青年画家が旅先でのーんびりしながらあれこれ考え、芸術論を物々と唱えている話でした。なんだか志賀直哉の「城の崎にて」のような雰囲気。
ストーリーらしいストーリーが、無いわけじゃないけどあるわけでもなく。。。
でもところどころに、思わず気に入ってしまうすてきな言い回しや一文が出てきて、さすが漱石!と思わされます。
・・・・・・・・・かといってストーリーがあるわけでもないんだよなあ・・・。難しッ。
よく中高生の頃、読書感想文の課題になっていた「草枕」ですが・・・正直、当時課題に選ばなくてよかった・・・。難しくて無理。書けません。
この小説の深い意味を理解するには、中高生の私には早すぎ。今の私もまだまだ。もっと人生経験積んでから、かな。
(ミッチョリーナ)
2008.06.21 『TSUGUMI』吉本ばなな
なぜか急に「TSUGUMI」が読みたくなって。なぜだろう??
「TSUGUMI」読むのはもう5回目です。自分の成長とともに、読むたびに感想が違う。
初めて「TSUGUMI」を読んだのは小学生の頃です。確か6年生。読んでみての感想「なんでこれが流行っているのかよくわかんない。つぐみ、めちゃくちゃ性格悪いくせに」。
つぐみの魅力がわからんなんて、お子ちゃまですねえ、わたし。
次に読んだのは中学生の頃。親友がよしもとばななさん大好きだったので、なんとなくまた手にとってみました。その時の感想「やっぱりよくわからない。つぐみ、やっぱり性格悪い」。
まだまだケツが青いのぉ。
3回目はなんと・・・高校入試の国語の問題。感想「お!『TSUGUMI』じゃん!楽勝!」。
おかげさまで、無事、高校合格できました・・・^^;
4回目は大学生になって。感想「あれ?つぐみ、ってちょっと魅力あるかも(イヤなヤツだけど)。」
ようやくちょっと大人になってきた?
そして今回。
つぐみ、めちゃくちゃ魅力的な子です。傑作なヤツです。
もともと身体が弱かったせいでまわりじゅうにちやほやされて育ち、その反動で「意地悪で粗野で口が悪く、わがままで甘ったれでずる賢」く育ってしまったつぐみ。
ものすごく綺麗な容姿と、わがまま放題なハート、壊れて止まりそうな肉体をもった女の子。強くて生命力のある心を持ちながら、それに伴わない体が、切ない。丈夫ではない。いつも死と隣り合わせ。だからこそつぐみの放つ光は、強く輝くのです。こんなにワガママでイヤなヤツで情熱的で強いつぐみなのに、いつこの世から消えてしまってもおかしくない、と思うとつぐみがはかなくて愛しくて、たまらなくなるのです。つぐみのわがままも、キョーレツな性格も、憎らしい発言も、キラキラと強い光を発する宝石のようにまぶしく、大切なものに思えてくるのです。
目を閉じると伊豆の鄙びた海辺の町の風景と、長い髪と大きなきれいな目と白くて細い体、そして強烈な個性を持った美少女が私の脳裏に浮かんできます。そしてこの「TSUGUMI」の物語の先も、つぐみは伊豆でしぶとく生き続けていて、今も軽口をたたいていてほしい、と願わずにはいられません。
(By ミッチョリーナ)
2008.06.17 『蟹工船』小林多喜二
『蟹工船』
日本史だか国語の時間にプロレタリア文学の名作として教えられた記憶はあるのですが、読んだことがなかった小林多喜二の『蟹工船』、いまバカ売れしているそうですね。
で、流行ってる、とか聞くとついつい手が出てしまう私、即買ってみました。
北の海で蟹を収穫して、新鮮なままボイルして、捌いて缶詰めにする。寒くて、辛い作業ですが、「蟹工船」はドル箱です。船主と水産会社、商社は当然労働者にムチを入れる。中間管理職の現場監督・浅川はノルマ達成のため工員にさらに厳しくムチを入れる。
この本の出版された1929年当時は世界恐慌の年。失業者が増えている時代です。だから、辛い・キツイ、っていうか生きて帰れるかわからない蟹工船の工員のクチも後釜がいくらでもいる。
ノルマ達成のための捨て駒にされていても、学がないからだったり、借金があるからだったりして劣悪な環境にも抵抗できずにいた工員たちですが、団結して、みんなでストを起こすシーンはドキドキして胸が高鳴ります。
プロレタリアとかそういうことは私にはよくわからないけれど、読んでいて純粋に面白い作品でした。
しかし、「なぜ今これが売れているか」。それを考えると、これから日本社会が進んでいく方向に不安を覚えます。先人たちが残していったものを、知識・経験として生かせないものでしょうか・・・。
(By ミッチョリーナ)
2008.06.06 『東京バンドワゴン』小路 幸也
まずは、「イイッ!!!」。
今年度出会った本のナンバー1です。
うーん「LOVEだねぇ。LOVEなんだねぇ。」
友人の、そのまた友人である将棋の棋士の方で、読書家の高野秀行五段のオススメがこの『東京バンドワゴン』。いい本を教えていただいて、感謝感激。
「東京バンドワゴン」というのは下町にある古本屋の名前。
築70年にもなる今にも崩れ落ちそうな日本家屋で、カフェも併設されています。
営んでいるのは今時珍しい4世代8人の大家族。
古本屋の帳場に座っているのが三代目店主の堀田勘一(頑固な昔かたぎ)。
勘一の息子・我南人は金髪ロン毛のロッケンローラー。60歳。
孫の名前は紺・藍子・青。(このセンス、大好きです!)
紺はフリーライター。
藍子はシングルマザーで、紺の嫁・亜美さんとカフェを切り盛りしている。
青は超モテモテの旅行添乗員(ちなみに我南人の愛人の子)
それから曾孫は藍子の娘・花陽と、紺と亜美さんの息子。
ちなみに語り手は幽霊!!!
二年前に死去した堀田サチ(勘一の嫁)。成仏せずに、いまも堀田家をひそかに見守っています。
私のお気に入りは金髪ロン毛のロッケンローラー、我南人。どこからともなくフラリと現れては「LOVEだねぇ、LOVEなんだねぇ」と言って去っていく。
イメージ、もろ内田裕也。ロッケンロール!シェゲナ・ベイベー♪
中でも家出した孫への一言は私の心をしびれさせました。
「家出は若者の特権だねぇ。年取ってからやると失踪者になっちゃうからねぇ。今のうちにどんどんやりなさい」
続いて
「ケンカは若者の特権だねぇ。年取ってからやると犯罪になるからねぇ」
ガナト、ブラボー!!!
下町人情あふれる、にぎやかで温かいお話です。
なんとなくサザエさんっぽい雰囲気、大家族で、もちろんご近所さんとも仲良し。何気ない日常が愛おしくなるようなストーリー。基本仲良しだけれど時には言い争いがあったりゴタゴタがあったり。でも根底に流れるものは「LOVE」。文字を追うごとに、「東京バンドワゴン」のある風景が目の前に浮かんでくるかのようでした。そしてそれはもう泣けちゃうぐらいすてきな光景。
「東京バンドワゴン」サイコー!
(By ミッチョリーナ)
2008.05.22 『船乗りクプクプの冒険』北杜夫
【あらすじ】
「もう船がでる時刻なんだ、クプクプ」――。頭の悪い作家キタ・モリオ氏の書いた奇妙な本を読んだため、突然、不思議な世界へ投げ出されてしまったタロー少年。オンボロ船に乗りゆかいな冒険がはじまった。ナマケモノの島や人喰い人の島など、メチャメチャな世界のメチャメチャなお話。紺碧の海と、豊かな空想の世界を描いた一大メルヘン。
友人が「小さいときに好きだった本」として紹介してくれたのがこの本。
まず、主人公の名前がいい!なんせ「クプクプ」ですから。かわいいじゃないの!
ドクトルマンボウの北杜夫さんらしく、ユーモアいっぱい。「頭の悪い作家キタ・モリオ氏」として登場しちゃったり、自分自身をパロディにしちゃうセンスがたまりません。
ひとたびページをめくればハチャメチャなのにスカッとまぶしい冒険の世界へトリップできます。
ほんとうにシッチャカメッチャカなファンタジーなのに、それでもれっきとした冒険物語。クライマックスはちょっと手に汗握ります。
どうなる!?どうなるんだ、クプクプぅ!!!
とドッキドキですが・・・最後はプッシューと脱力。そしてさわやかで希望いっぱいな結末が待っています。
力まない、力まない、ゆるーくゆるーく・・・。
なんだかまぶしい一冊です。
忙しい日常にちょっと疲れてしまったとき、オススメの本。
しかし!
何が一番すごいかって、この本、刊行は昭和37年。
その時代にここまでブッ飛んじゃってる小説を書いた北杜夫さんは実にすばらしいっ!
(By ミッチョリーナ)
2008.01.29 『私の男』桜庭 一樹
今年の直木賞受賞作『私の男』。
読んで、2日経ってからじわじわと「凄い小説だった」と思いました。
ちなみに、読んでる最中は嫌悪感いっぱいで、「こんな本はチャッチャと読んでしまおう」と思っていました。
それは、まさに嫌悪感。
鳥肌が立つぐらいおぞましくて、吐きそうなぐらい汚らわしかった。
だから「こんな本は・・・」と思い、じっくり行間を味わうなどせず、乱暴に読み進めたのに・・・・・・。
いやだ、いやだ、いやな本だった。と思いつつも、いつしか引きずり込まれていました。
花24歳の、結婚式前日から始まるストーリー。
読み始めてすぐに、花とその養父=惇悟との関係が尋常ではないことに気づかされます。
2人にはその肉体関係だけでなく、過去にも秘密があるらしいことが仄めかされます。それは一体何なのか。
花は養父のことを「惇悟」と呼ぶときと「おとうさん」と呼ぶときがあります。
花が呼びかける「惇悟」と「おとうさん」、その奇妙なアンバランスさから、花の抱える心の闇の深さが感じられて切なくなります。
そして、その「おとうさん」と体の関係中に花の呼ぶ「おとうさぁん」という声。私は、文中何度も出てくる「おとうさぁん」が大嫌いでした。
汚らわしくて、気持ち悪くて、不愉快で、目を背け、耳をふさぎたくなりました。
でもそれが、花と惇悟の「日常」です。
「おとうさんは、むすめに、何をしてもいいの」
「親子のあいだで、しちゃいけないことなんて、この世にあるの?」
花の言ったその言葉のなんと妖しく罪深いことでしょう。
歪んでいるし、間違っている。それでもそう生きるしかなかった花と惇悟の生き様が読み進めてやっと胸に迫ってきます。さらに読み終わってから、二人に魅了されます。
ちっともうらやましくない二人だけれど、もっと心の奥底を知ってみたくなります。
(By ミッチョリーナ)
2007.12.28 『ホルモー六景』万城目 学
『鴨川ホルモー』『鹿男あをによし』で私を魅了した万城目学さんの新作。傑作『鴨川ホルモー』の番外編です。
なので、ぜひ『鴨川ホルモー』を読んでから手に取っていただきたい。っていうか、「鴨川ホルモー」がわからないと「ホルモー六景」は意味不明です、きっと。
今回は京大、いや、京都にとどまらず、東京でも「ホルモー」。現代に収まらず、過去までも『ホルモー』です。
ホルモンじゃありません、念のため。
今回の『ホルモー六景』の中には、歴史上の出来事や人物と「ホルモー」との関わりがおもしろい!
万城目さん、天才だな、とつくづく感じます。やっぱ京大とかに入っちゃう人って私なんかとは頭のつくりが違うんでしょうか。
私が一番面白かったのが梶井基次郎「檸檬」と『ホルモー』が意外なところでつながってたというストーリー。
あーーーー、こんなん読んだからまたしても「私もホルモーやりてぇっ!」と思う日々。
ちょっと「ホルモー」に魅せられすぎて頭がおかしくなってきたので、次回は江國香織さんでも読んで、気を引き締めます。
(by ミッチョリーナ)
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御影倫代です。幼少時からかなりの「本の虫」。おかげで家中本だらけ。ただ外国モノの推理小説がちょこっと苦手です。だって・・・登場人物の名前、わかんなくなっちゃうんだもん。。。*(好きな作家:江国香織、宮本輝、西加奈子、山崎豊子)